軽井沢-海野宿-小諸-富岡を回る小旅行(6)
旧富岡製糸場案内図

現在の公開レベルでは、1時間弱の説明が終われば、見学者はさっさと帰るしかないだろう。そして次の目的地に直行ということになり、富岡市にはあまり恩恵をもたらさない感じだ。早急に整備を進め、滞在時間を長くさせるようにしていくことが肝要だろう。そうすると、必然的にここで飲食をとることになる。ビジネスチャンスが生まれることだろう。同時並行的に、製糸場の付近ももう少し飲食や土産物購入などをしたいと見学者に感じさせるような整備が必要だと思う。
繰糸所…重要文化財
①-⑥製糸場として、商品である生糸を作り出すための最も重要な建物。糸繰りをお湯で行うため、ものすごい湿気がこもったようで、湿気対策が必要だった。また、当初は電気が通じていなかったため、明かり取りの窓が必要だった。そういう観点からの設計になっている。



従来の日本の建築物では見られなかったトラス構造が採用されている。トラスとは様々な建物に利用されている構造形式の一つで、三角形をつくるように部材をピン支点で連結して構成された構造形式を言う。



⑦どうもこのように見えにくいビニールで覆われているのが不人気の大きな原因のようだ。写真だってうまく撮ることができない。どうにも目障りで仕方がない。

⑧-⑩ごく一部だけカバーを外して見られるようになっている。これだけでは、正直がっかりだ。せめて1系統くらい稼動させるべきだ。



寄宿舎
⑪昔の小学校の校舎のような外観だ。何位か味のある建物だ。
工女さんは、将来の指導者になることを期待された位置づけだったようだ。下記のように割と良い就労条件だったようだ。
勤務
朝の7時~夕方の4時半まで 実働時間 7時間45分(ただし、季節によっては勤務時間が異なる)
休日 年間76日
内訳 日曜日 50日
諸御祭日 6日
年末 12月29日~12月31日
正月 1月1日~1月7日
暑休 10日
一等工女 25円 二等工女 18円 三等工女 12円 等外工女 9円
給料は月割りで支給。別に作業服代として、夏冬5円支給される。
明治8年には4段階から8段階に変更。年功序列ではなく能率給。

西繭倉庫(西置繭所)…重要文化財
⑫東繭倉庫と同じもの。訪問時2013年11月初旬現在は、内部未公開。早急に内部を改修して、何らかの形で開放したい意向のようだ。横浜の赤レンガ倉庫のように、夢のある再生は考えられないものだろうか。

⑬-⑭西繭倉庫と副蚕場
市長の発言では、操糸場の機械を動かすのは大変なので、副蚕場に残された小規模の装置を再稼働して、見学者に見せたい意向のようだ。

⑮-⑯乾燥場
農家から集められた繭の中の蛹はまだ生きている。そのまま置いておけばやがて蛾となり穴を開けて出てきてしまう。そこで、繰糸するまでのあいだ保管できるように、熱風で乾燥させて殺蛹し、カビ発生を防止する。この工程を「乾繭(かんけん)」というそうだ。これを行う施設。


乾燥場と副蚕場の後ろに蒸気釜所(重要文化財)と鉄水溜(重要文化財)とがあるようだ。
外からは見えないのが残念。
2013.04.11付けの読売新聞に載った富岡市長の発言から
富岡製糸場は現在、東繭倉庫と繰糸場の一部だけが公開スペースだが、これを広げたい。そのためには、まず安全管理を徹底する。今年度に防災計画を策定し、今年夏の「国際記念物遺跡会議」(イコモス)の現地調査後に、西繭倉庫の修復工事をできるだけ早く始める。収蔵品の展示場や図書室、調査研究施設として活用していく方針だ。
将来的には、繰糸機も動かして製糸の工程を見てもらえるようにしたい。繰糸場の機械装置は大規模で難しいので、「副蚕場」の小規模な装置の稼働を目指す。早くても5年後になるが、長い目で整備を進める。
以上で、『軽井沢-海野宿-小諸-富岡を回る小旅行』シリーズは終了です。最後までお付き合いいただき、大変ありがとうございました。