日本民家園(13)
日本民家園の内で、私が一番好きな建物だ。出羽三山の湯殿山・月山の近くの日本でも有数の豪雪地帯にあった古民家。独特の形状だ。
妻側には高ハッポウが、平側にもハッポウがある。これだけでも素晴らしいのに、急勾配の屋根の棟上には、神社の置千木を思わせるようなグシグラがある。これらでググっときてしまうのだ。
外観
グシグラとハッポウ
古民家というよりかは古から存在する神社という感じの印象を受けないだろうか?

妻側
こちらは高ハッポウだ。船枻(セガイ)で持ち出し強度を高めてあるようだ。雪がかなり積もったときは、この高ハッポウが臨時の出入り口となる。せっかくの南面だというのに、開口部が殆ど無いという変則的な家屋だ。


外壁面の様子
居住空間以外は開口部をつくらない構造のようだ。豪雪地帯だから当たり前かもしれない。セガイで持ち出し強度を高めてあるのは妻面だけではないんだ。雪の重みに負けない工夫なのだろうか。

家屋内部の様子
間取り

アマヤ
スキー宿の用具置き場のようなところと考えてもらって構わない。蓑など雪で湿ったものをここで吊るして水分を落とす場所かな。

ナガシ
今まで見てきた古民家では、一体どこで食材の下ごしらえしたのかと思うような家屋が少なくなかったが、こちらはかなり主婦の立場に立った設えになっていた。立てかけてあるとは、清水を流しに取り込むための樋。美味しい料理をつくることができたと思う。

高ハッポウの裏側からイナベヤにかけての辺り
真冬には、ずいぶん高いところから出入りしたんだ。大変な暮らしがあったようだ。『おしん』の世界を垣間見たような気がする。

モノオキとナヤ
寒くなれば茅で雪囲いをするし、もっと寒くなれば、雪が隙間を防いでくれたのだろう

オメとウヘヤ
日常使いの部屋だったのだろう

カミデとシモデ
客間を兼ねた部屋だったのだろう。当然だが、奥がカミデだ。

シモデとオメ
シモデはお蚕さんも同居していたのかな。寒くさせない工夫だったのかもしれない。


カミデ
唯一、畳敷き。上客を接遇する時の部屋だったのだろう。


神奈川県指定重要文化財
旧所在地:山形県鶴岡市松沢
建物区分:農家(肝煎の家)
構造形式:寄棟造(高ハッポウおよびハッポウ付き)、妻入、一部二階、背面庇付、茅葺、桁行15.8m、梁行9.6m
建築年代:18世紀末期
屋根に高窓のある豪雪地帯の家
湯殿山麓の田麦俣(たむぎまた)集落やその周辺には、ハッポウ造と呼ばれる独特の民家が分布しています。養蚕のために二層三層をつくり、屋根に高窓(ハッポウ)を設けて採光の工夫をしたその姿は、非常に特徴的です。
菅原家住宅もこのハッポウ造の民家で、高い軒や板壁で囲った外観などに豪雪地域の家づくりがうかがえます。
豪雪は間取りにも影響しています。大戸口前のアマヤ(前室)をはじめ、ニワ(土間)に物置やイナベヤ(板敷)を設ける点などは、雪の多い冬場の暮らしを考慮した工夫です。
見どころポイント!
雪に濡れたものを脱げるよう、入り口にアマヤを設けています。
積雪時にも立て付けが悪くならないよう、敷居に車が設けてあります。