日本民家園(10)
特徴のある家屋だ。大戸口側の茅葺きの軒が異常に低く、茅の先端に顔が当たる高さである。そのために、腰を屈めて潜らねばならないこと。それと、ムシロ敷の居間があること。床板を張らない「土座」であり、ムシロの下は地面をつき固め、茅束が敷き詰められている。初めてこの施設を訪れた人は、居間の床張り部分がなく、その高さが土間と同じであることにショックを受ける。こうした土座住居は、甲府盆地では18世紀前半まではごく普通にみられたようだ。
外観
開口部が極めて少ない。

茅葺屋根の先端部は地面から150cm程度だと思う。斜面から吹き上げてくる強風を凌ぐための対策のようだ。

ドイツの古民家のようだ。尤も、向こうは妻入り形式で、大きさも相当なものがあるし、デザイン性もあるし、がっちりつくってある感じがする。対して、こちらは如何にも素朴な感じかな。


軒裏側は普通の高さがある

建物内部の様子
土間がかなり狭い。直前に分棟型の家屋を見てきたから、なおさら狭く見えるはずだ。


土間と居間の高さが変わらないのに、強いショックを受けることだろう。何しろ床板を張らないから、床下がない。ボランティア説明員によれば、ゴロっと横になったときは板張りの床よりもリラックスするという話だった。そうなのかなあ。



蓆をめくった様子。確かに隙間風は入ってこないが、…。


神奈川県指定重要文化財
旧所在地:山梨県甲州市塩山上萩原
建物区分:農家
構造形式:切妻造、茅葺、桁行14.5m、梁行8.9m
建築年代:17世紀末期
芝棟と土座のある甲州民家
甲府盆地の民家は切妻造(きりづまづくり)の妻壁(つまかべ)に柱を見せ、屋根中央を「突き上げ二階」とする形式が知られています。この家も移築前はそのような姿でしたが、調査の結果、当初は二階がなかったことがわかりました。屋根裏を養蚕(ようさん)に利用しはじめたことにより、突き上げ二階としたのです。
構造は、内部の四本の太い柱を中心にして組み立てられています。これは「四つ建(よつだて)」と呼ばれるもので、甲州の古式な手法です。屋根の頂上はイワヒバを植えた「芝棟(しばむね)」になっています。内部には土間(どま)と並んでイドコと呼ばれるムシロ敷の居間があります。床板を張らないこのような床を「土座(どざ)」といい、ムシロの下は地面をつき固め、茅束(かやたば)が敷き詰められています。
見どころポイント!
風の強い山の斜面にあったため、軒が低くなっています。
居間には床板を張らず、地面の上に茅束とむしろを敷いて暮らしていました。