日本民家園(9)
作田家は佐久田村(千葉県山武郡九十九里町作田)の名主で、同時に鰯漁の網元を勤めた有力な家柄だった。さくだ村のさくだ家。家柄がわかると言えよう。
少子化や核家族化が進んで大きな家屋は不要になり、税金が安くなることを狙って『減築』を行う事例が稀ではない昨今。その昔、イワシ漁が活況を呈し、『増築』を行った家屋があった。江戸時代の増築とはどんなものか見ておきたい。同じ棟で広げるのではなく、別棟をうまく接するような形でつなげてある分棟型の家屋だった。
外観
別棟同士がくっついた感じになっているのがおわかりいただけるだろう。茅葺屋根で軒を並べる場合、雨水の処理をどうしたのかが気になるところだろう。


以下の設えは、あくまでも来客用。家族は土間で行水だったのではなかろうか。便所は外かな。


建物内部
雨樋
一番工夫したところだろう。境目のところに大きな栗の木を2つに割って作った雨樋。これが括り付けられてあった。と日記には書いておこうということらしい。というのも、移築直線には分棟型ではなく、普通の直屋に改造されていたからで、次回以降に取り上げる予定の太田家住宅のそれと同じ仕組みとしてある。つまり、推定部分なのだ。

増築部分


元からあった部分
なかなかしっかりつくってある印象を受けた


芸術的な梁の組み方だ。どうやってこの組み方にたどり着いたのだろうか?

玄関ほかはかなりお金をかけてある感じに見えた

国指定重要文化財
旧所在地:千葉県山武郡九十九里町作田
建物区分:漁家(網元の家)、分棟型
構造形式:主屋=寄棟造、茅葺、桁行13.0m、梁行11.1m、風呂場及び便所付属 土間=寄棟造、妻入、茅葺、桁行11.5m、梁行5.6m
建築年代:主屋=17世紀後期、土間=18世紀後期
イワシの地引網漁で栄えた網元の家
この建物はイワシ漁で栄えた九十九里にありました。漁具小屋は海岸近くにあり、この家そのものは内陸に立地していたため、漁村の家の雰囲気はありません。 外観は二棟が軒を接しているように見えます。これを分棟型(ぶんとうがた)と呼び、クリの木の半割丸太(はんわりまるた)をくり抜いた大きな雨樋(あまどい)が二つの屋根をつないでいます。居室部は囲炉裏(いろり)のある広いカミがまず目に入ります。床の間の前身である押板(おしいた)や仏壇(ぶつだん)を備え、網元(あみもと)としての生活に使われた格式のある部屋です。その上手は畳敷(たたみじき)の部屋がつづき、座敷としては最高の扱いとなっています。背後には便所と風呂が付属し、座敷と同様に上層民家の接客部分を伝える貴重な建築です。
見どころポイント!
居間の梁は松の曲材を巧みに組み合わせており、見事な造形美を見せています。
屋根が二つあり、間には大きな丸太を2つに割って作った雨樋があります。