第196回文楽公演
第一部も第二部もどちらも鑑賞すると、通し狂言『一谷嫰軍記』の主要部分を鑑賞したことになる。普通なら取り上げない段も今回は取り上げていて、国立劇場開場50周年記念の公演に華を添えたように感じた。国立劇場としても実に40年ぶりの大盤振る舞いの上演だそうだ。私も漸く繋がりが理解できたように感じた。
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「組討」
熊谷が沖へと向う敦盛を呼び戻すという場面。四代目中村歌右衛門の熊谷次郎直実、初代中村福助の無官太夫あつ盛。嘉永3年(1850年)5月、大坂中の芝居。五粽亭広貞画。

「菟原の里林住家」
忠度は六弥太と後日の勝負を約し、菊の前とも別れを惜しみつつ須磨の陣所へと帰る。右より五代目瀬川菊之丞の菊の前、七代目市川團十郎の岡部の六弥太、二代目澤村源之助の薩摩守忠度。天保2年(1831年)7月、江戸河原崎座。国貞画。

私自身は、人形遣いの吉田簑助、桐竹勘十郎、三味線の鶴澤清治を見て聴いてみたいと思って出掛けた。今回、吉田簑助は若く美しい『菊の前』の役。相変わらず生きた女性が舞台に登場しているかのような素晴らしい人形遣いぶりなのだが、如何せん出番が短かすぎ。相模の役のほうが良かったように思わないでもなかったが、長い出番をこなす体力がなくなっているのだろうか。あの、独特の『女』の至芸を嗣ぐ人が見当たらないだけに、もう暫くは頑張ってもらいたいものだ。
桐竹勘十郎は熊谷次郎直実の役。今回の主役だろうが、役の重さに動じない安定した力量を発揮しているように思われた。彼のfacebookを見ると、馬に乗るシーンがあるが、その時は舞台下駄を履いて人形を遣うそうだ。足を挫いたりしないように、注意して行わなければならないのだろう。
三味線の鶴澤清治は、私の好きな三味線奏者だ。妻に言わせれば、艶があるのだとか。NHKで『闘う三味線 人間国宝に挑む ~鶴澤清治~』を見てしまってから、熱烈なファンになった。
太夫の豊竹咲太夫は、長丁場の『脇ケ浜宝引の段』を演じた。表現力豊かで、他を圧するパワフルな演じ方は、本当に魅力的だと思った。妻が絶賛していた。人間国宝の太夫2人が引退し、切場語りの太夫は彼一人なのだ。
そういう状況で、中堅が頑張っている。竹本千歳太夫の語りに惚れ惚れとした。一層の精進を期待したいものだ。
国立劇場開場50周年記念
<第一部>11時開演
並木宗輔=作
通し狂言 一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)
初 段 堀川御所の段・敦盛出陣の段
二 段 目 陣門の段・須磨浦の段・組討の段・林住家の段
<第二部>4時開演
国立劇場五十周年 寿式三番叟 (ことぶきしきさんばそう)
通し狂言 一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)
三 段 目 弥陀六内の段・脇ヶ浜宝引の段・熊谷桜の段・熊谷陣屋の段
(主な出演者)
豊竹咲太夫、鶴澤寛治、鶴澤清治、吉田簑助ほか
下記は期間限定のjump先かもしれない。jump出来なかったらあしからず。
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