またも出かけた日本民家園(18)
外観
グシグラという屋根棟
神社にあるそれを思わせる。何ともすごいものだ。







角(かど)に角(つの)があるような独特のやり方。今まで気づかなかった。

屋内
間取り

アマヤ
濡れた雨具は、ここにつるした。湿気を屋内に持ち込まないようにしたのだろう。

ニワ・ナヤ・モノオキ・イナベヤ

このくらいの隙間は雪の時には囲いをするだろうから、気にならなかったと思う。

使いやすそうな座り流し。武者窓もしっかり備えてあったようだ。熊などが顔をのぞかせても困るだろうから、当然なのだろう。

オメエ
火棚のついた囲炉裏がある。しっかり木をくべたのだろう。家族が集う現在のリビング的な間だろう。


シモデ
こちらにも囲炉裏があったが、火棚はつけていない。囲炉裏としては補助的な位置づけだったのではなかろうか。その先に見える畳の間はカミデ。

表示にはデイと書かれてあった。間取り図と表記が異なるなあ。でも『下デイ』という意味合いなのだろう。客をもてなすことができる少しかしこまった部屋のようだ。

シモデの外から中を見た様子。奥はオメエだ。

カミデ
『上デイ』ということなのだろう。床の間やアミダサマと呼ばれる仏壇・仏具入れなどがある。

神奈川県指定重要文化財
旧所在地:山形県鶴岡市松沢
建物区分:農家(肝煎の家)
構造形式:寄棟造(高ハッポウおよびハッポウ付き)、妻入、一部二階、背面庇付、茅葺、桁行15.8m、梁行9.6m
建築年代:18世紀末期
屋根に高窓のある豪雪地帯の家
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教育委員会の解説
古来より霊山としての信仰を集めた出羽三山の湯殿山・月山を東にひかえた、山形県東田川郡朝日村の田麦俣は、美しい外観を持つ「ハッポウ造」民家のふるさととしてよく知られている。菅原家住宅は同じ朝日村だが、田麦俣とは谷ひとつを隔てた大鳥川沿いの松沢に所在していた。同じ村のうちでも、田麦俣の民家とは外観も間取りも異なり、むしろ南に隣接する越後の朝日山麓の民家に親近性を持つといわれる。
菅原家は代々肝煎を勤めたと伝える有力農家で、その主屋は18世紀末頃の建築と推定されている。妻側に設けられた入口の上部2階はセガイで持ち出し、高ハッポウと呼ばれる開口部を設ける形が、この家の外観の最も大きな特徴である。この地方は有数の豪雪地帯で、高ハッポウは積雪時の出入口としても利用したようである。また、屋根の平側にも開口部(ハッポウと呼ぶ)を設け、小屋裏の採光と換気に役立てている。急勾配の屋根の棟上に置かれた、神社の置千木を思わせるようなグシグラも特徴的である。
土間への出入口は妻側に設けられたアマヤの奥に置かれる。アマヤは今でいう風除室、あるいは雪よけのための施設だろう。床上は4室からなり、表(南)にデイ(シモデ)・カミデイの2室の客座敷を置く。田麦俣ではこれらは妻側に置かれるから、両者は異なる系統の間取りである。カミデイは唯一の畳敷の部屋で、床の間の隣りにアミダサマが設けられるのもこの家の特色である。村の人々がここに集まって、大きな数珠をみんなで繰回しながら念仏を唱える、いわゆる百万遍念仏を行ったというから、肝煎という家柄ならではの施設であったのだろう。竿縁天井を張るが、竿縁が床の間に直交する、いわゆる床刺しであるのが珍しい。デイの裏側のオメエはこの家の中心で、大きな囲炉裏の上にはアマダナが設けられ、衣類の乾燥や、食物をいぶして保存するためなどに用いられた。ウーヘヤは寝室で、ここには低い中2階が設けられている。ウーヘヤを除く部屋の天井は高く、デイ及び土間は根太天井、オメエは竹簀子天井である。また壁は土壁を用いず、すべて板壁である。
構造は4周の半間幅を下屋とし、チョーナ梁を用いるのは合掌造と同じである。オメエの上部を除いて板敷の2階が造られ、一部は3階とする。高ハッポウのある妻側2階は床が一段低いが、これは積雪時の出入りを考慮してのことだろう。田麦俣の特徴ある多層民家の形成は、明治期に入って養蚕が盛んになり、そのために必要な床面積を増やすために2階・3階を設け、そしてそこの換気や採光のための開口部が必要となったため、ハッポウや高ハッポウが造られた結果とされている。菅原家も多層民家ではあるが、建立時期は田麦俣のハッポウ造よりも古く、そのため高ハッポウも小さい。平側のハッポウも旧状にならって取り付けられているが、創建時にあったか否かは明らかでない。
以上のように、菅原家住宅は同じ村内でありながら田麦俣の民家とはやや異質な多層民家であり、また高ハッポウを持つ民家としては古く、この地方の養蚕と民家の形式の関係を知るうえで重要な遺構である。
以上で、『またも出かけた日本民家園』シリーズは終了です。最後までご覧いただきありがとうございました。