またも出かけた日本民家園(9)
特徴が多い家屋だ。まず、風の強い山の斜面にあったため、大戸口側の軒が異常に低くなっている。茅葺屋根のてっぺんには芝棟がある。そして、居間には床板を張らず、地面の上に茅束とむしろを敷いて暮らしていた。
外観
前記したとおり、大戸口側の軒が異常に低い。1.7mを少し超えるくらいの私でも、屈まないとまともにぶつかる。1.6mくらいの人でもぶつかるかもしれないほどだ。そして屋根のてっぺんは芝棟になっている。棟を泥土で固めて雨が入りにくくしてある。その泥土が流れてしまわないように根を張らせるのだ。この家屋の場合は、イワヒバを植えている。





茅葺き屋根のてっぺんの部分を『棟』という。そのままでは雨に弱いので、しっかりした対策をとる必要がある。主要な方式は以下のようなものだそうだ。
竹簀巻き(たけすまき):編んだ竹で棟の茅を巻く構造。日本各地で多く見られる。
置千木(おきちぎ) :木を組み合わせて棟を覆う構造。木材の豊富な山間部に見られる。
笄棟(こうがいむね) :茅を棟に積み重ね、屋根から突き出させた木材に締めて固定する構造
芝棟(しばむね) :意図的に木や草を生やし、その根で棟の弛みをなくす構造
屋内
何といっても『土座』が目に付く。何しろ土間と同じ高さなのだから。見学者が目を丸くするのは当然だろう。説明のボランティアは床下からの隙間風が入らないので、案外快適だというのだが、時々、虫が這いまわるようなことがあるようだ。敷き茅を定期的に取り換えるなど、居住性を高める工夫はしていたそうなのだが。
間取り

土座



駄馬の背中に背負わせる道具だったようだ。荷鞍の一種なのだろうか。横木が渡してあると、背中が痛かったのではないかと同情してしまうのだが。
なお、駄馬とはダメな馬のことではなく、貨物を背中に載せて運搬するために利用される使役動物で、それが馬の場合にこのように言うようだ。



ちょうなで削った柱。手作り感があふれる。

神奈川県指定重要文化財
旧所在地:山梨県甲州市塩山上萩原
建物区分:農家
構造形式:切妻造、茅葺、桁行14.5m、梁行8.9m
建築年代:17世紀末期